Aさんとオセロ遊びをしたら逆転されました。その考え方がすごいんです。
Aさんはオセロが得意で、自由遊びの時間にお友達やいろいろな職員を相手にオセロをしています。
ある職員に聞くと「Aさんはとてもオセロが強くて、本気でやっても負けてしまうので、Aさんに手加減してもらわないといけないほどなんですよ」とのこと。
その話を聞いて、私は早速Aさん手合わせをお願いしました。
1回目は慣れない相手だったせいか、私が快勝。2回目は「もう1回やりましょう!」とAさんの方から誘ってくれました。
そして、その時にこんな話をしてくれました。
「負けた時は、その相手のやり方を覚えていていないとダメ、そしてうまいところを次やるときに真似するんですよ」と。
その話の通り、1回目とは違う攻め方をして、今度は見事Aさんの勝ちでした。
自由遊びの時間に意識している事
こどもプラス上田教室では毎日活動の中に「自由遊びの時間」を必ず入れています。
やるべき事が終わった後には、必ず自分で選択して選べるご褒美としての位置づけとして「おやつ」や「自由遊び」があります。
自閉症スペクトラムのお子さん達は「選ぶ」という事が苦手な方が多くいらっしゃいます。
それでも敢えて自由な時間を作っています。
それは脳科学で自閉症スペクトラムのお子さん達には「ドーパミン・セロトニン・オキシトシン」といった幸せホルモンの分泌が少なく、報酬系ネットワークが構築されにくいことがわかっているからです。
選択が苦手なお子さんにはいくつかの選択肢の中から選んでいただく用意をしますが、パターンがわかってくると自発的に「今日は○○をやりまーす」と利用前から自由遊びの時間にやりたいことを決めてくるお子さんも出てきます。
自由遊びの上級者は、その日の気分や職員、遊び道具、お友達のやっている事を見て総合的に判断して遊びを決めていきます。
それはそれはものすごい情報収集力と現実検討の力(やりたい事とそれが実際に出来るかどうか)が試されているのです。
異年齢での集団活動を長年見ていると、お子さん毎に「今 この発達段階まで成長して来たな」という事がよくわかります。
他者のやり方を見てまねる→学ぶ姿勢=人生の壁を乗り越える力
オセロひとつをとっても、ただなんとなくやるのではなく、頭をフル回転させて、新しい攻め方を研究して、それを自分のものにしているAさんはとても頼もしく、すごいなぁと思いました。
Aさんは、もうすぐ高校を卒業して社会人になります。
社会へ出たら、今まで以上にいろんなことを経験して、時には壁にぶつかることもあると思いますが、そんな時は、このオセロのように、人のやり方を見たり、新しい方法を身につけたり、試してみたりしながら、Aさんならきっと乗り越えていけると信じています。
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